みのむしが読んだ小説 / 小説

『樽とタタン』中島京子を読んで

記念すべき一回目だから何かかっこいいことを書いてやろう…と下心を抱いていたのですが、そもそもそんな器も才能もないので、一番最近読み終わった本について書きます。

中島京子『樽とタタン』です。どうしてもリンゴのケーキを想像してしまい、甘くほろ苦いお話なのかと思いきや、まあそれはそうなのですけど、なんとも言えない後味、じゃなかった、読了感でした。私はこの味は好きです。

低学年の子供が持つ異常な執着が、大きくなってコロっと治ってしまったり、見ていた世界が本当なのかどうなのかわからなくなるのは誰しもあることなのでしょう。それが大人になるということなのかもしれませんが、「大人」にならずに消えていくことだってありうるはずです。

最後に出てきた「姉妹」は誰なのでしょう。

タルト・タタンは姉妹が偶然生み出した食べ物と伝わります。まるでケーキの誕生のようにもう一人のトモコと偶然出会って、意気投合して、そしてそのまま、気付かないまま、いつの間にかいなくなってしまった。

その出会いがきっかけで、作中で「タタン」と呼ばれていた少女は突然一人の「トモコ」になりました。不安に駆られ、赤い樽の中で過ごさねば安心を得られなかったタタンはもう、「タタン」としての子供の純真さ、無邪気さ、危うさ、繊細さを脱ぎ一人のトモコになったのでしょう。まるで本来、アップルパイになるはずだったケーキが、タルト・タタンになってしまったように。

ところで、子供の無邪気さと残酷さで私が一番好きなのはこの本。三浦哲郎の短編集『木馬の騎手』です。こちらは大人になることなく、子供が子供として完結します。何よりも残酷で、本当に無垢で、それゆえ何物にも染まらない、そのまま終えていく子供たち。

自分が大人になりたくないからか、この本は好きで好きで何度も読み返しています。

何かと入試や国語教材として引用されがちで、メリーゴーランドの話が模試に出たように記憶しているのですが、小学校の時に読んだ「ロボット」にあまりの衝撃を受け、忘れられず長年探し求めて手に入れた本です。

私が探していた時は絶版で、値段も高く、結構大変だった覚えがあるのですが、今アマゾンで見たら非常に安いですね。読んでください。

みのむし

投稿者

minomushiko@gmail.com

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