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『京都 近代の記憶 場所・人・建築』中川理

新型コロナ騒ぎがなければ、建築関係でお客様をご案内する予定でした。それに備えて、たまたまブックオフで見かけた際に買っていた本書を読了しました。

コンパクトながら、京都の近代建築について網羅していました。著者は新聞連載であるため説明不足な部分があるやもしれないといった危惧を前書きに記していましたが、むしろ一つ一つの見出しの短さゆえに、京都という都市が持つ特徴を常に読者に意識づけることに成功していると思います。

個人的に建築には明るくない、それも近代建築となれば、おもしろいとは感じるものの、それをガイディングに活かすことがいまいちうまくできないでいたのですが、個々の建築を取り上げて解説しようとするからそれが難しいのであって、日本の近代という時代が何を要請したのか、という視点であれば太刀打ちできそうな示唆を得ることができ、大変有意義な一冊でした。

ガイドでありながら、私は観光地そのもの、建造物そのものを解説することに苦手意識がかなりあり、通訳案内士という外国人向けのガイドであるが故、やはり日本史の中における役割や、意義を伝えられるべき、と免罪符のように思っているのですが、対・近代建築というと現前に存在する建物そのものが何よりも意識されるように思っていました。それは近代建築を流れとして捉えられていなかったからなのだと認識を新たにしました。

もっと勉強します。

『クラシック音楽全史 ビジネスに効く世界の教養』

実は幼少期からクラシック音楽に親しんできたのですが、一度かなりのクラシック好きのお客様をガイドとしてご案内し、「日本の音楽事情」の話に及んだことがあります。その時私は浅薄な知識しか持ち合せていなかったので、とにかく裏打ちのあることではなく、自分の感想や印象を答えるより他がなかったのでした。

そもそも通常「クラシック」といえば西洋音楽のことです。とすれば、そこに日本が入っている余地はないのですが、日本での西洋音楽受容の過程や、その後の広まりについていつかは書を取らねばならないと思い、その前に何か手ごろな概説書を…と思っていたところ、書店に平積みにされていた本書は気づけばめでたく精算が終わっていたのでした。

ただ、クラシック音楽の全体像自体は取り立てて見なくてもなあ、と思うところもあり、ずっと積んでいたのを、一念発起して手に取りました。読み口が優しいのですぐに読めました。

クラシックに限らず、やはり西洋のお客さまをご案内するうえで、宗教画から端を発する絵画美術や彫刻美術、文学古典は押さえておきたいところです。文化は過去からの積み重ねであるので、今現在の我々の認識を形作るものだからです。

また、日本では「クラシック」というとどこか貴族趣味の雰囲気が漂いますが、西洋では全くそんなことはありません。「教養」と明記している本書の通りです。(オペラは事情が違ってきますが…。)

敢えて本書をガイディングにつなげていくなら、日本が近代化を急いだ明治時代の話をするとよいでしょう。我々日本人になじみのある唱歌がその時に多く西洋音楽に歌詞をあてたり、もとにして作られているため、お客様もおもしろがって聞いてくださいます。また、これは本書にはありませんが、日本語の一音一拍のリズムが、歌唱に適しているとよく評されることも触れてもよいかもしれません。