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『「はかなさ」と日本人』竹内整一

竹内整一氏の著作についてはこれまでも何度か触れてきました。


折を見て読もうと思っていた一冊を読了しましたので、記録がてらさらっと挙げておきます。この本は、私としては改めて手元に置いて書き込みながら、ツアーの主軸に据えて使いこなしたい一冊です。

「わび・さび」とか、「夢幻」とか、「あはれ」とか、そのような日本事象を形作る様々な言葉に通底するのは「儚さ」なのではないか、と個人的に思います。では儚さとは何なのか、どういったところから生まれるものなのか。そのあたりのヒントになるのが本書です。

私としては、西行法師や芭蕉の感性にとても惹かれるものがあるので、その引用があることがうれしくなりました。(というかこの手の話をするにおいて避けられない)(ああ、はやく隠遁したい…)

夢と儚さの関係をもう少し掘り下げると、それだけでボリュームが出そうです。「夢」というキーワードから、なんとくパウロ・コエーリョの『アルケミスト』を読みましたが、確かに西洋と日本の夢の感覚が大きく異なっている気はしました。

夢は見るものなのか浮かぶものなのか、というのも一つ面白い視点かと思います。

『知っておきたい和食の秘密』渡辺望

なんとなく図書館にあったので手に取りました。2020年3月発刊の新しい本です。
自分のガイディングとマッチするところが多く、気になるところはありましたが概しておもしろく読了しました。

まず、気になったところというのは、他国の文化を少し毛嫌いしているきらいがあること。ガイドとしては、どの文化にも公平に接したいところなので、「日本が素晴らしい」という傾倒はよろしくないし、もちろん「〇〇人は××だからだめだ」ということを直接言ってしまっては言語道断です。その点を差し引いて、事実関係、論旨としては素晴らしい本だと思います。

「和食」に興味を持つお客様は非常に多く、割と正直な(?)私としては、「和食なんてそんな定義はない!!!」と言いたくなるところです。実際、和食のイメージをおうかがいしながら、それらが作られたイメージであること、中国からの影響を古来たぶんに受けながら、日本化して連綿と変化し続けていることをお話します。

もちろん、さくっとてんぷらやお寿司を紹介することもありますが、時間をかけられるなら、そのようなお話をしておくと、カレーやオムライスにも興味を持っていただけます。繁忙期にツアーで食事同伴だとどうしても似たり寄ったりになって辛いので、そのような、日本人が思う「洋食」が和食の流れの中にあることを説明して逃げていました。

だっておいしいもの食べたいし、京都は(レトロな)洋食文化も盛んだし…。

そのあたりのことがよく整理された本でした。ガイディングに一ひねり加えたいと思う方にはオススメです。

『「かぐや姫」誕生の謎』孫崎紀子

かぐや姫の話を上手にできるようになりたいなーと思っていた矢先、図書館で見つけたので借りてみました。

読み物として非常に面白かったです。よく、竹取物語の作者は紀貫之だとか、菅原道真ではないか、と言われているところですが、菅原道真の孫にあたる菅原文時ではないかという説。ササン朝ペルシアの末裔が来日した話がかぐや姫に残っているのではないか、との説でした。

実際にこの説を採用する、しないに関わらず、日本が閉じた国ではなかったこと、駐豪や朝鮮半島を介して西の文化を広く受け入れていたことは、実に重要な示唆だと思いますし、日本の独自性が日本で完結しているものではない、というのは一貫して私がガイディングで通している姿勢です。

そういった意味では、ぜひこの説はうまく取り入れたいなーと感じました。

ところで、この本の中で一番参考になったのは盂蘭盆会と、お盆の関係です。いろいろと読んでみても、いまいちしっくりこなかったのですが、拝火教との関わりを説明され、かなり腑に落ちました。

火伏せの祭りも、この時期にあるのは実はササン朝の東走と関係があるのではないか…と個人的には思い浮かんだ次第です。

学説として、どれほど支持を集めているのかは寡聞にして存じ上げませんが、個人的にはとても興味深かったです。

ただし文章は少しあっちこっちに行っているような印象があり、追いかけにくいものでした。もしお読みになる方がいらっしゃるなら、ある程度、ササン朝と中国とのかかわり、および、百済滅亡のあたりを念頭に置いた上で、飛鳥時代の話だと整理してから読まれると良いでしょう。

また、かぐや姫誕生の謎とありますが、本書内でも述べられている通り、正確には竹取の翁の物語誕生の謎、についてです。

『日々是好日』森下典子

とても人気でありながら、私自身が茶道になじみのないため、敬遠していた本書を読了しました。

茶道に親しみのない人ほど読むと面白いのでは、と思わされました。

時折、お客様をお抹茶や茶道の体験にお連れするのですが、私自身は通訳をしながらも(う~~~~ん)とか思っていたのですが(本当にごめんなさい……)、型が存在する意味や、小さな茶室の中で完結しない空間の広がり、季節の移り変わりとの密接なかかわりなど、どれもこれも日本事象の極みとしか言えないような事柄が、筆者の実体験から丁寧に掘り起こされていて、読み物としても、参考書としてもおもしろい稀有な一冊だと思います。

小説ではあまりやらないのですが、珍しく付箋を貼りながら、参考文献として読み、ノートに取りました。

そして、これを読んで、ようやく茶道に手を出す決心がつき、知り合いに依頼して手はずを整えました。茶道を社会人になってから始めた友人には、「茶道を始めてから、季節の移り変わりにとても敏感だった小さい頃のあなたのことをよく思い出すよ」と言われているので、楽しめるでしょう!たぶん!

『京都 近代の記憶 場所・人・建築』中川理

新型コロナ騒ぎがなければ、建築関係でお客様をご案内する予定でした。それに備えて、たまたまブックオフで見かけた際に買っていた本書を読了しました。

コンパクトながら、京都の近代建築について網羅していました。著者は新聞連載であるため説明不足な部分があるやもしれないといった危惧を前書きに記していましたが、むしろ一つ一つの見出しの短さゆえに、京都という都市が持つ特徴を常に読者に意識づけることに成功していると思います。

個人的に建築には明るくない、それも近代建築となれば、おもしろいとは感じるものの、それをガイディングに活かすことがいまいちうまくできないでいたのですが、個々の建築を取り上げて解説しようとするからそれが難しいのであって、日本の近代という時代が何を要請したのか、という視点であれば太刀打ちできそうな示唆を得ることができ、大変有意義な一冊でした。

ガイドでありながら、私は観光地そのもの、建造物そのものを解説することに苦手意識がかなりあり、通訳案内士という外国人向けのガイドであるが故、やはり日本史の中における役割や、意義を伝えられるべき、と免罪符のように思っているのですが、対・近代建築というと現前に存在する建物そのものが何よりも意識されるように思っていました。それは近代建築を流れとして捉えられていなかったからなのだと認識を新たにしました。

もっと勉強します。